変形性膝関節症とは
膝関節の炎症によって、痛みが起こります。痛みだけではなく、腫れや変形などが見られ、病気が進行すると歩けなくなってしまう疾患を、変形性膝関節症と言います。
初期段階の膝の痛みは治りやすいため、受診せずに放置されることが多いですが、進行するうちに症状が悪化してしまうため、軽い痛みであっても早めに医療機関にご相談ください。
変形性膝関節症の症状
変形性膝関節症は、大きく3段階に区別されます。
初期
- 起床後すぐに歩くと膝が痛い、違和感がある
- 膝に体重がかかると痛い
- 膝が痛くなっても少し休むと解消する
中期
- 膝が痛くなると治りにくい
- 痛みで膝を曲げられない
- 膝を伸ばせない
- しゃがむ姿勢ができない
- 正座できなくなる
- 膝の周囲が浮腫む、腫れる
- 膝が凸凹になる
- 膝の曲げ伸ばし時にカリカリという音が鳴る
末期
- 膝が変形しているのが分かる
- 歩けなくなる
- 立ったり座ったりできなくなる
- 膝が強く痛むため日常の動作が難しくなる
中期の段階で膝の痛みが強くなるため、日常生活での動作に支障を及ぼします。末期になると、歩けなくなったり、座ったりできなくなるため、QOLが大幅に低下してしまいます。このため、初期段階で気になる症状がある場合は、早めに受診して治療を行うことが重要です。
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症は、その原因によって一次性と二次性に分類されます。
一次性では、筋力低下や肥満、スポーツなど様々な要因が重なって膝に負荷がかかって発症します。一方、二次性では、関節リウマチや靱帯損傷、骨折など明確な原因が分かって発症します。
一次性変形性膝関節症の主な原因
- 筋力の低下
- 肥満
- 加齢
- スポーツによって膝に負荷がかかる
- ハイヒールをよく履く
- サイズの合わない靴を長く履く
- 偏平足・O脚
など
二次性変形性膝関節症の主な原因
- 靱帯損傷
- 膝周辺の骨折、関節軟骨の損傷
- 膝関節捻挫
- 膝蓋骨脱臼
- 半月板損傷
- 慢性関節リウマチ
など
変形性膝関節症の検査と診断
問診を行い、患者様の生活習慣や病気や怪我の既往歴、スポーツ歴などを丁寧にお伺いします。また、脚の変形や痛みの部位、腫れのある部位を確認し、可動域の確認を行います。
必要に応じて、X線検査など精密検査を行い、検査の結果から診断をしていきます。病気が進行すると日常生活に大きな支障を及ぼすため、早期に診断・治療を行うことが重要です。
特に、変形性膝関節症と関節リウマチは症状が非常に似ていますが、全く別の疾患のため、治療法が異なります。このため、両疾患の鑑別が必要です。
変形性膝関節症の治療
痛みや腫れを緩和しながら、機能回復を図ります。薬物療法・注射・リハビリテーション・手術治療などから、患者様の状態や年齢、ご要望などを伺いながら適切な治療を検討していきます。
薬物療法
痛みと炎症を緩和するために、非ステロイド性抗炎症内服薬やオピオイド内服薬、外用薬などを処方します。治療効果が高い薬剤は副作用も強く出るため、治療経過を十分観察しながら、最適な薬剤の処方をしていきます。
注射
膝関節内にヒアルロン酸を注射します。痛み緩和と機能回復を図ります。炎症や痛みが強い場合は、ステロイド剤を関節内に注射することも検討します。
リハビリテーション
膝の痛みや炎症が軽度の場合は、リハビリテーションを行って筋力を強化していきます。病気の進行を防ぎ、関節の可動域を拡げていきます。
手術
薬物療法で改善が見られない場合には、手術治療を検討します。発症した原因によって手術方法が異なるほか、患者様の年齢によっては体力的に採用できないこともあります。
高位脛骨骨切り術
O脚が原因で発症している場合、50代以下の場合には、高位脛骨骨切り術を行います。膝の可動域、軟骨を温存できますが、回復に時間を要するため適用するかの考慮が必要です。
人工膝関節置換術
膝の変形が進んで激しい痛みに襲われている場合、日常の動作に支障が及んでいる場合には、人工膝関節置換術を実施します。術後は膝の可動域が狭くなることがあります。医療の進展によって耐用性は60歳以上でも適応と延長されていますが、体格や状態によって適応には慎重に検討する必要があります。
人工関節単顆置換術
初期段階の場合、O脚が進行していない場合、膝骨壊死がない場合などには、人工関節単顆置換術を採用します。靱帯機能が残される必要の有無など適応されるには条件や制限があります。膝可動域は温存されます。